リンカンシャーへの旅(1)旅立ち

吹奏楽関係者に「今度、ルノの定演でグレインジャーの『リンカンシャーの花束』をやるんだ」と話すと「いいね!」との反応が多いのですが、初めてこの曲に接した時は、正直「そんなにいいのかな?」と思いました。


特に全六曲中、初めから三曲目までは、ホルン in F の譜面だとフラット四つ(Des dur、Cis moll)で、指使いだけでなく、ほかの楽器とピッチを合わせるのにも苦労します。

でも、ある日、別の楽団でギリンガムの『Be Thou My Vision』を演奏する機会があったのですが、後半のホルンのメロディーが、同じくフラット四つでした。前半はアイルランドに古くから伝わる賛美歌をベースにしていますが、後半は明らかに別のメロディーで、大学の後輩に尋ねたら「あれはギリンガムが新たに作曲したんです」と教えて貰いました。

グレインジャーの原曲はイギリスの民謡。ギリンガムの方はアイルランド風バラード。両方とも、郷愁を誘う様な曲です。調性以外にも何か共通点があるのだろうか? そんなふとした好奇心を持ったことで、居ても立ってもいられなくなってしまいました。

というわけで、これから何回かに分けて、『リンカンシャーの花束』を巡る心の旅の物語をお届けしたいと思います。

→つづく