自由研究:緊張との向き合い方
「緊張するってことは音楽に集中していないってことなんだよね。」
先日、本番前の楽屋ではそんな会話をしていました。
『本番なんてなければいいのに!』とずっと思ってきたフルートMです。
緊張した方がいい演奏ができるという人もいる中、私にとって緊張は間違いなくマイナスの状態で、これがなければ本番はもっと楽しいのにと考えてしまうのです。本番だけではなく毎週の練習でも手が震えてしまうほどのあがり症で、今まで数々の失敗や悲しい思いをしてきました。音楽やめようかなと考えたこともあるくらいです。
それでもルノに入団してから10年以上、いまだにしぶとく緊張の研究を続けています。
ジョギングをしてドキドキした状態で吹く練習をする、緊張に効果のある漢方薬を飲む、メガネをかけてみる。アレクサンダーテクニークで体の使い方を学んだり、ついにはお客さんは敵か味方か?の議論を交わしてみたり。全然緊張しない、本番が楽しいという人達の話も沢山聞きましたが全く参考になりません。意味のないものやあまり良い事ではないものなどもありましたが笑、悩み苦しんでまだまだ沢山のことを試してきました。
そして今のところ私がたどり着いた対策は、
【ギリギリまで諦めず暗譜するまで曲を体に染み込ませ、前日には必ずとんかつを食べる。本番は楽しいと言い聞かせてステージに上がりホール全体を見渡す。緊張は体の中に溜めず指先から逃す。先にある自分のソロを意識しない。今この瞬間の音楽に集中する。】です。
これらの事がうまくできれば、緊張に負けない気がします。100%うまくいった!という本番は今までなかなかありません。ここは意外とうまく乗り越えた、ここは負けてしまったな、という反省の繰り返しです。音に集中するためには、本番を迎える前にちょっとの自信がある状態にしておかなければなりません。失敗してしまった悔しさはあっても、もっと練習しておけば良かったなという後悔のないように十分準備をして本番を迎えようと努力はしています。
それでも、本番2時間ステージで演奏していると、「私、お客さんも本番のことも忘れて楽しんでいるかも。」と気づく瞬間があったりします。ホールいっぱいに響く音やステージ床から伝わってくる振動を感じながらその時の音に集中して演奏しているうちに、感動して涙が出そうになることもあります。そんな時は緊張すること自体をすっかり忘れてしまっています。
その本番にしかできない演奏を経験したとき、ステージには魔物だけではなくて神様もいるものだなーと、『本番ってやっぱりいいな。』という気持ちに塗り替えられます。
演奏を続けていく限り、きっとこの先も私には緊張の問題がつきまとってくると思います。でも緊張の事ばかり意識していたらもったいない。できるだけ音楽そのものを楽しんでこの仲間と一緒に演奏できる時間を大切にできるように。今日からまた練習です!