リンカンシャーへの旅(2)リスボンは別れの手紙

第1曲のタイトルは『リスボン』副題は『船乗りの歌』と訳されています。
ここで、まず二つの疑問にぶち当たりました。「リンカンシャーってイギリスだよな。なのに何でいきなりポルトガルの首都が出て来るわけ?」更に「原曲は民謡だってことだけど、民謡っていうことは歌詞があるんだよな。どんな内容の歌詞だったんだろう?」
手始めに調べた民謡の歌詞は次の様な内容でした。ウィリアムとナンシーという若い男女が交わした手紙の内容が七番まで歌われています。
とある五月の月曜日の朝、リスボンに向けて出航することになったウィリアムが、恋人のナンシー宛てに別れの手紙を書きました。
動揺したナンシーは「別れたくない、今夜にでも結婚して欲しい。そして十ヶ月後にはあなたの子供を産むから、どうか行かないで」と懇願します。
しかしウィリアムは、「女王陛下の軍人として船長の命令に背けない。本当に済まない」と謝ります。
それでも、どうしても諦め切れないナンシーは「それなら私は髪を短くして、軍服を着て、あなたの部下として一緒に戦場に行くわ」と迫ります。
困り果てたウィリアムは「お前の華奢な体じゃ砲弾が飛び交う戦場は無理に決まってる」と説得しようとします。
ナンシーは屈せず「あなたと結婚する為ならば、スペインでもフランスでもどこでも行くわ。そして、戦場ではあなたの傍らで寝るわ」と書いたのでした。
以上が六番までの歌詞の内容で、最後の七番は、一番の繰り返しです。
なるほど、なぜタイトルが『リスボン』なのかはこれで良く分かりました。しかも副題の sailor は「水夫」ではなく「水兵」のことだったのでした。やっとひと息ついて、今夜はもう寝ようと思ったのですが「ちょっと待てよ」と、また新たな疑問が湧いて来てしまいました。
日本に置き換えると『防人の歌』に喩えても良いくらいの感情表現のくせに、僕らが演奏している第一曲は、6/8のリズムでやけに軽快で小気味良いメロディーなのは、何か変です。どうもスッキリしないのです。
→つづく