リンカンシャーへの旅(11)行方不明の娘が見付かった

CIMG0544.JPG今回は第6曲『行方不明の娘が見付かった』です。歌詞が9番まである原曲は、こんな物語になっています。

むかし、むかし、すみれの花が咲く谷間の街に、一人の娘が叔父さんと幸せに暮らしていました。ところが娘は三人のジプシーに誘拐されてしまいます。叔父さんは国中を探しましたが見付からず、それどころか金目当てに娘を売り飛ばした罪で投獄されてしまいます

娘と幼馴染みだった若者が心配して捜索を始め、イングランドばかりでなくフランスにもスペインにも探しに行きました。ある晩泊まった宿でその娘を偶然発見したのです。娘は若者を見るなり彼の腕の中に飛び込んで泣きじゃくりました。

「どうして私がダブリンにいるって分かったの?」
「三人のジプシーが私を騙して連れ去られたの。。」

「叔父さんはイングランドで死刑囚として牢屋に繋がれているんだ。」

「お願い、私をイングランドに連れて帰って!」

娘に哀願された若者は、身請け金を払い娘との結婚を約束します。
二人はイングランドに戻り叔父さんに再会します。

「叔父さん、私のせいでこんな酷い目に遇わせてごめんなさい!」
「どうか、どうか許して下さい。私は無事でした、私は生きています!」

若者と娘は叔父さんの濡れ衣を晴らしました。「行方不明だった娘が見付かった」と人々は鐘を鳴らし、歌を歌い、谷間の街は賑わいを取り戻しましたとさ。めでたし、めでたし。

さてさて、11回目を迎え、この連載も遂に最終回です。そもそも初めて音出しをした時は『リンカンシャーの花束』ってどこがそんなにいいの?程度にしか思っていなかった僕ですが、こうしてイギリス民謡の歌詞を調べただけでなく、グレインジャー自身の事や彼を敬愛してやまない人々の事も調べ、様々な音源も聴いたりしていくうちに「寝ても覚めてもリンカンシャー」と思うほど好きになってしまいました。

写真は、団員のT君が貸してくれたリンカン聖堂のパンフレットです。かれは去年一年間イギリスに留学した際にリンカンシャー地方も訪れたそうです。旅の途中ポケットに入れられていたのか、折り畳まれてへたっていますが、僕には勲章を貸してもらった様な気分です。いいなイギリス、いいなリンカンシャー。。

僕もいつかきっと空想の中だけではなく、本当にリンカンシャーの旅に出掛けてみたくなりました。こんな想いが皆さんにも伝えられるような演奏会になることを祈りつつ、これでひとまずおしまいです。長々とお付き合い下さいまして、ありがとうございました。(完)